📋 重度訪問介護の要点【早見】
- 重度訪問介護は、障害支援区分4以上で、二肢以上に麻痺等がある人、または行動関連項目が10点以上の知的・精神障害の人に、自宅で長時間の介護・家事・見守り・外出同行を1対1で行う障害福祉サービス(介護給付)
- 利用者は15,544人・事業所7,626か所(2026年1〜3月の平均・国保連データ)。利用者は4年で約1.6倍に増え、事業所数は横ばいで人手が足りない
- 働くには重度訪問介護従業者養成研修(基礎課程10時間・追加課程10時間・統合課程20.5時間・行動障害支援課程12時間)か、初任者研修以上の介護資格が要る。基礎課程だけなら2日で修了
- 報酬は1時間未満から8時間まで段階で、8時間を超える分は95%の単価。夜間を含む8〜24時間の長時間勤務が多く、給与は時給制の事業所と月給制の事業所がある
- 2024年度改定で、入院中の利用が区分4以上に広がり、入院時支援連携加算(300単位)と熟練従業者の同行支援の拡充が入った
出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容(重度訪問介護)」「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」「障害福祉サービス等の最近の動向」(令和8年9月・国保連データ)、平成18年厚生労働省告示第538号と都道府県の重度訪問介護従業者養成研修実施要綱(秋田県・福岡県・山梨県)、「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査」(2026年10月9日確認)
介護施設で3年働きました。求人で「重度訪問介護」を見かけますが、施設の介護と何が違いますか?
施設は複数の利用者を交代で見ますが、重度訪問介護は利用者の自宅で1対1、しかも8時間を超える長時間が前提です。食事や排せつの介助だけでなく、家事、外出の同行、夜間の見守り、研修を受ければ喀痰吸引まで担います。制度・研修・1日の流れ・給料の順に、10年この仕事をした経験も交えて説明しますね。
- 重度訪問介護がどんな人に、どんな支援をするサービスか知りたい
- 無資格でも働けるのか、従業者養成研修はどこで何時間受けるのか分からない
- 勤務時間・夜勤・給料の実態と、自分に向いているかを知りたい
重度訪問介護の現場で10年勤務した介護福祉士・社会福祉士の有資格者(元職員)。
本記事は、厚生労働省の報酬改定資料・国保連データ・都道府県の研修要綱を確認し、現場の経験を加えて執筆しています。
この記事でわかること
- 重度訪問介護の対象者と支援内容、居宅介護・施設介護との違い
- 従業者養成研修の4課程(時間数・内容・受け方)と、介護資格があれば不要な場合
- 1回の支援の流れ(長時間・夜間・医療的ケア)と、現場で求められること
- 報酬の仕組みと給料の実態(時給制・月給制・深夜割増)
- 2024年度改定で変わった点(入院中の利用・熟練従業者の同行支援)
- 職場の選び方と、次に目指せる資格(介護福祉士・サビ管・相談支援専門員)

重度訪問介護とは:対象者と支援の中身
居宅介護(ホームヘルプ)とは何が違うのですか?
居宅介護は「身体介護1時間」「家事援助30分」のように短時間の訪問を組み合わせます。重度訪問介護は8時間を超える長時間の訪問が前提で、介護・家事・見守り・外出同行を一人のヘルパーが連続して担います。対象も区分4以上の重度の人に限られます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 障害者総合支援法5条3項。介護給付のひとつ |
| 対象者 | 障害支援区分4以上で、①二肢以上に麻痺等があり、認定調査の「歩行」「移乗」「排尿」「排便」がいずれも「支援が不要」以外の人、または②行動関連項目等(12項目)の合計が10点以上の人(知的障害・精神障害で行動上著しい困難がある人) |
| 支援内容 | 居宅での入浴・排せつ・食事の介護、調理・洗濯・掃除などの家事、生活全般の援助、外出時の移動中の介護、入院中の病院での意思疎通支援 |
| 人員 | サービス提供責任者(常勤ヘルパーのうち1名以上)、ヘルパー常勤換算2.5人以上 |
| 報酬 | 1時間未満から8時間までの時間区分ごとに単位が決まり、8時間を超える分は8時間までの単価の95%。深夜・早朝の加算、医療的ケア等が必要な人への15%加算、特定事業所加算など |
| 利用者数 | 15,544人(2026年1〜3月平均)。2022年4〜6月の9,944人から約1.6倍 |
支援の特徴は「長時間・1対1・生活全体」です。利用者には人工呼吸器や吸引が必要な筋ジストロフィー・ALS・脊髄損傷の人、重い知的障害や自閉症で行動障害のある人、脳性まひの人などがいて、一人暮らしを続けるために24時間を複数のヘルパーで埋める使い方が典型です。
2018年度からは障害支援区分6の人が入院中も重度訪問介護を使えるようになり、2024年度改定で特別なコミュニケーション支援が必要な区分4・5の人にも広がりました。
サービス全体の体系と受給者証の取り方は障害福祉サービスの種類一覧と使い方で説明しています。
働くための研修:重度訪問介護従業者養成研修の4課程
無資格・未経験でも働けますか?
基礎課程(10時間・2日)を修了すれば重度訪問介護に従事できます。初任者研修や実務者研修、介護福祉士を持っている人は養成研修なしで働けます。医療的ケアが必要な利用者を担当するなら統合課程と喀痰吸引等研修(第3号)、行動障害のある利用者なら行動障害支援課程が要ります。

| 課程 | 時間 | 内容 | 受講後にできること |
|---|---|---|---|
| 基礎課程 | 10時間(講義3+実習7) | 職業倫理、基礎的な介護技術、介護とコミュニケーションの技術、外出時の介護技術 | 重度訪問介護の従業者として従事できる |
| 追加課程 | 10時間(講義7+実習3) | 医療的ケアを必要とする人への支援、緊急時の対応。実習は在宅の区分5・6の肢体不自由者の現場を1か所以上含む | 医療的ケアが必要な利用者(15%加算対象者)の担当に近づく |
| 統合課程 | 20.5時間 | 基礎+追加の内容に、喀痰吸引・経管栄養を必要とする重度障害者への支援の講義を加える | 喀痰吸引等研修(第3号)の基本研修と組み合わせると、特定の利用者への吸引・経管栄養ができる |
| 行動障害支援課程 | 12時間(講義6.5+演習5.5) | 強度行動障害の基本的理解、制度と支援技術、情報収集と記録、特性の分析 | 知的・精神障害で行動障害のある利用者の担当。強度行動障害支援者養成研修(基礎)と同じ内容 |
時間数は国の告示の最低基準で、大阪府のように基礎18時間・統合30時間と独自に長く設定する自治体もあります。
研修の実施主体は都道府県と、都道府県が指定した事業者(社会福祉法人・事業所・NPOなど)で、重度訪問介護の事業所が自前で研修を開き、採用と同時に受けさせる形が一般的です。
受講料は実施者ごとに違い、採用後に事業所が負担する例もあります。
介護資格との関係
| 持っている資格・研修 | 重度訪問介護 | 医療的ケア(吸引・経管栄養) | 行動障害のある人 |
|---|---|---|---|
| 介護福祉士・実務者研修・初任者研修 | 従事できる | 喀痰吸引等研修(第3号)の修了が必要 | 行動障害支援課程か強度行動障害支援者養成研修(基礎)があると望ましい |
| 基礎課程のみ | 従事できる | 統合課程+喀痰吸引等研修(第3号) | 行動障害支援課程 |
| なし | 基礎課程(10時間)から | 同上 | 同上 |
行動障害支援課程は強度行動障害支援者養成研修の基礎研修と内容が重なり、合同で開催できます。詳しくは強度行動障害支援者養成研修とはで説明しています。
1回の支援の流れ:長時間・夜間・医療的ケア

| 時間帯 | 支援の例 |
|---|---|
| 訪問・引き継ぎ | 前の担当者から体調・排せつ・食事・睡眠の記録を受け取る。呼吸器や吸引器の状態を確かめる |
| 日中 | 起床介助、食事、排せつ、体位変換、入浴、調理・洗濯・掃除、買い物や通院・外出の同行、見守り |
| 医療的ケア | 喀痰吸引・経管栄養(研修修了者のみ)。実施記録と看護師への報告 |
| 夜間 | 体位変換・排せつ介助・呼び出し対応・見守り。仮眠の取り方は事業所と利用者の取り決めによる |
| 記録・引き継ぎ | サービス提供記録、ヒヤリハット、次の担当者への申し送り |
施設介護との大きな違いは、利用者の家で、利用者の生活リズムとやり方に合わせることです。
食事の順番、物の置き場所、体位変換の角度まで本人の指示や手順書に従い、ヘルパーの都合で変えません。「介護する」より「本人の手足として動く」感覚に近い仕事です。
長時間を一人で担うため、体調の変化に気づく観察力、緊急時に看護師や救急へ連絡する判断、長い沈黙に耐えられる落ち着きが求められます。
向いている人・つらいと感じやすい点
| 向いている人 | つらいと感じやすい点 |
|---|---|
| 一人の利用者と長く関わりたい人 | 同じ家で長時間過ごす閉塞感 |
| 夜勤や長時間勤務で効率よく稼ぎたい人 | 夜間の呼び出しで眠れない日がある |
| 利用者の指示に沿って正確に動ける人 | 自分の判断で動けない場面が多い |
| 医療的ケアや難病に関心がある人 | 命に関わる機器の扱いの緊張 |
| 施設の人間関係より1対1が合う人 | 同僚と顔を合わせる機会が少なく相談しにくい |
給料の実態:時給制と月給制、深夜割増
施設より稼げると聞きましたが本当ですか?
事業所によります。重度訪問介護は8時間超の長時間や夜間が多く、時給制なら深夜割増(25%以上)が乗るため、同じ時給でも月収は施設の日勤より高くなりやすいです。一方で利用者の入院などで勤務が減ると収入も減ります。月給制で安定させる事業所もあるので、求人票の内訳を見てください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報酬の構造 | 1時間未満〜8時間の時間区分で単位が決まり、8時間超は95%。深夜(22〜6時)・早朝・夜間の加算、医療的ケア等対象者への15%加算、特定事業所加算(10〜20%)がある |
| 給与形態 | 時給制+深夜割増、または月給制。24時間を複数のヘルパーで分ける事業所では夜間帯の単価を高く設定する例がある |
| 参考値 | 令和6年度の処遇状況等調査では、処遇改善加算を取得する事業所の常勤・福祉介護職員の平均給与額は月327,720円(全サービス平均。手当・一時金を含む) |
| 手当 | 処遇改善加算の配分、資格手当(介護福祉士・喀痰吸引)、移動時間や待機の扱いは事業所ごと |
| 増えやすい働き方 | 統合課程+喀痰吸引等研修で医療的ケア対象者を担当する、夜勤を含むシフトに入る、熟練従業者として同行支援を担う |
処遇状況等調査はサービス種類別の給与を公表していないため、上の平均値は目安です。
2024年度改定では、医療的ケア等が必要な利用者を初めて担当する従業者にも熟練従業者の同行支援(最初の120時間)が評価されるようになり、新人が一人立ちするまでの期間に事業所が報酬を得られるようになりました。
求人を比べるときは、時給だけでなく、深夜割増の有無、1回の勤務時間、移動時間の扱い、研修費の負担、利用者が入院した場合の補償を確かめてください。
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2024年度改定で変わったこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入院中の利用 | 特別なコミュニケーション支援が必要な利用者について、対象を区分6から区分4以上に拡大 |
| 入院時支援連携加算 | 利用者が従業者の付き添いで入院する前に、事業所の職員と医療機関が事前調整を行った場合に300単位(入院前に1回) |
| 熟練従業者の同行支援 | 医療的ケア等が必要な15%加算対象者への支援に初めて従事する従業者も対象に。新設分は所定単位の90%、120時間以内 |
| 国庫負担基準 | 重度障害者の単位の見直しと、介護保険対象者の区分の細分化 |
| 行動援護の経過措置 | 介護福祉士等を行動援護従業者養成研修修了者とみなす経過措置は2027年3月31日まで延長し、その後廃止 |
入院中の重度訪問介護は、人工呼吸器の人の体位や吸引のタイミング、知的障害のある人の意思表示を病院に伝える役割で、入院先の看護師と連携する場面が増えています。
職場の選び方と、次に目指せる資格

職場選びのチェックリスト(ひな形)
- 研修(基礎・追加・統合・行動障害支援)を事業所が受講させてくれるか。費用負担
- 喀痰吸引等研修(第3号)の実地研修を受けられる体制
- 1回の勤務時間(8・12・24時間)と夜勤の頻度、休憩・仮眠の取り決め
- 熟練従業者の同行支援(最初の120時間)と一人立ちまでの期間
- 担当する利用者の障害種別(肢体不自由・知的・精神・難病・医療的ケア)
- 給与の内訳(時給か月給か・深夜割増・移動時間・資格手当)と入院時の補償
| 次の段階 | 重度訪問介護の経験との関係 |
|---|---|
| 介護福祉士 | 実務経験3年+実務者研修で受験。重度訪問介護の従事期間も実務経験に数えられる。介護福祉士の過去問を無料でダウンロード |
| 喀痰吸引等研修(第3号) | 特定の利用者への吸引・経管栄養。医療的ケア対象者を担当すると手当や加算に直結 |
| サービス提供責任者 | 事業所の常勤ヘルパーのうち1名以上。介護福祉士・実務者研修などが要件 |
| サービス管理責任者 | 直接支援の実務経験(有資格者5年・無資格8年)+研修。サービス管理責任者になるには |
| 相談支援専門員 | 介護等の業務10年(有資格者5年)+初任者研修。相談支援専門員になるには |
| 社会福祉主事任用資格 | 勤務先からの申込みで通信課程1年。社会福祉主事任用資格の取り方 |
重度訪問介護の経験は、障害福祉の相談職・管理職の実務経験として数えられます。長く続けるなら、介護福祉士と喀痰吸引等研修を先に取り、サビ管・相談支援専門員の年数を積む順番が現実的です。
よくある質問
重度訪問介護は資格がなくてもできますか?
基礎課程(10時間)を修了すれば従事できます。初任者研修以上の介護資格があれば養成研修は不要です。
医療的ケアや行動障害のある利用者を担当するには、統合課程や行動障害支援課程、喀痰吸引等研修が別に要ります。
研修はどこで受けられますか?
都道府県と、都道府県が指定した研修事業者(重度訪問介護の事業所や社会福祉法人)が実施します。
採用後に事業所の研修を受ける形が多く、都道府県のサイトに指定事業者の一覧があります。
夜勤は必ずありますか?
事業所と利用者によります。24時間の支援を複数のヘルパーで分ける利用者が多いため、夜間帯のシフトがある事業所が大半です。
日中のみの求人もあるので、応募時に勤務時間帯を確かめてください。
施設介護の経験は活かせますか?
活かせます。体位変換・排せつ・食事の技術はそのまま使え、介護福祉士や実務者研修があれば養成研修なしで従事できます。
違いは「本人の指示に沿って1対1で長時間」という点なので、最初は熟練従業者の同行で慣れます。
喀痰吸引はできますか?
喀痰吸引等研修(第3号)を修了し、事業所が登録特定行為事業者の登録を受けていれば、特定の利用者に対して吸引・経管栄養ができます。
統合課程は第3号研修の基本研修と組み合わせて実施されることが多いです。
利用者が入院したら仕事はなくなりますか?
区分4以上で特別なコミュニケーション支援が必要な利用者は、入院中も重度訪問介護を使えます。
そうでない場合は勤務が減ることがあるので、月給制か、複数の利用者を担当できる事業所かを確かめてください。
重度訪問介護の利用者はどのくらいいますか?
2026年1〜3月の平均で15,544人、事業所は7,626か所です(国保連データ)。
利用者は4年で約1.6倍に増えた一方、事業所数は横ばいで、従業者が足りない状態が続いています。
まとめ
- 重度訪問介護は区分4以上の重度の人に、自宅で長時間・1対1の介護・家事・見守り・外出同行を行うサービス。利用者15,544人・事業所7,626か所
- 働くには従業者養成研修(基礎10時間・追加10時間・統合20.5時間・行動障害支援12時間)か初任者研修以上。基礎課程だけなら2日で従事できる
- 仕事は利用者の指示と手順書に沿う「本人の手足」型。長時間・夜間・医療的ケアが特徴で、観察力と落ち着きが要る
- 報酬は8時間超が95%の長時間前提。給与は時給制+深夜割増か月給制で、医療的ケア担当と夜間帯で上がりやすい
- 2024年度改定で入院中の利用が区分4以上に拡大、入院時支援連携加算300単位、熟練従業者の同行支援を拡充
- 経験は介護福祉士・サビ管・相談支援専門員の実務経験に数えられる。職場は研修・同行支援・勤務時間・給与内訳で選ぶ
介護福祉士・社会福祉士の有資格者(元職員)。
障害福祉の現場(重度訪問介護)で10年の実務経験を持ち、医療・介護・福祉の資格と制度の情報を発信しています。
参考資料:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」(重度訪問介護の対象者・内容・人員・報酬)/「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(入院中の利用の対象拡大・入院時支援連携加算300単位・熟練従業者の同行支援・国庫負担基準)/「障害福祉サービス等の最近の動向について」(令和8年9月17日 社会保障審議会障害者部会参考資料7・国保連データ)/平成18年厚生労働省告示第538号と秋田県・福岡県・山梨県・大阪府の重度訪問介護従業者養成研修実施要綱/「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」(2026年10月9日確認)
